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2024年2月11日(日)

降誕節第7主日

 

礼拝説教「神と富とに仕えることはできない」


願念 望 牧師

<聖書>

ルカによる福音書 16:1-13  


<讃美歌>

(21)26,7,210,528,65-2,28

 

 16章の最初には行間に表題がつけられて「『不正な管理人』のたとえ」とあります。この題は、元々聖書にはない言葉なので、聖書朗読のときには読みません。聖書を翻訳した学者たちが、わかりやすくするためにつけたものです。

 「『不正な管理人』のたとえ」と書いてあることで、幾分わかりやすくなっているかもしれません。しかしそのたとえの内容は、非常にわかりにくいものです。難解で、どう受けとめたらいいのか、悩んでしまう箇所です。

 わかりにくさはどこにあるかというと、私どもの常識の枠ではとらえきれないからです。不正な管理人は、その不正が主人に明らかになりそうになります。自分の仕事を取り上げられることが十分予想されました。会計の報告を出すように言われたのです。

 そのとき管理人は何をしたかというと、主人から借りた人たちを呼んで、借りた証文を書き換えたのです。そしてやめさせられた後の仲間をつくろうとしました。証文に油100バトス(約2300リットル)とあるものを、油50バトスに書き換えた。そして小麦100コロス(約23000リットル)を80コロスに。これは主人にとってはさらなる損失です。にもかかわらず、「主人は、この不正な管理人の抜け目のないやり方をほめた。」(8)とあります。

 「主人」という言葉は、「主」とも訳すことができます。「主」がほめたとなると、それは主イエスがほめられたことになります。主イエスは不正をすることを、よしと認めておられるのかと思うとわからなくなるのです。なぜ、不正を不正としてすぐ厳しく戒められないのか、すっきりしない。結びのところで、「神と富とに仕えることはできない」(13)と言われる主イエスは、何を語りかけておられるのでしょうか。

 

 何とか理解しようと苦労する学者たちの中には、証文を書き換えたのは、利息分をなくしたのだという意見もあります。利息を免除してやった。しかし高い利息であっても、それは主人の受け取るべきものです。あるいは、管理人の取り分もあるので、それを借りていた者たちに利息も含めて与えたという話もある。しかし、だからと言って不正ではないとはならないのです。

 この話を主イエスがされたとき、15章から続いていることを思い起こしたい。主イエス・キリストは、徴税人や罪人たちを受け入れて、彼らをも救いに招くように話をされたことから、この箇所につながっているのです。

 ですから、もし私どもが、不正な管理人をとんでもないと思うだけで、もはやその管理人には救いはないと思うなら、徴税人や罪人を退けてとんでもない奴らと思っていた、ファリサイ派や律法学者とある意味で同じところに立っていることになるのです。

 

 この不正な管理人の話は、続きが書かれていません。おそらく主人から職を取り上げられたことでしょう。そのとき、証文を書き換えてもらった人たちは、果たして、元管理人の友となったのでしょうか。借りていた人たちは主人からですし、証文を書き換えるような人を信用して友となったのかは疑問です。

 しかし主イエスは、徴税人たちの友となられました。もちろん、不正を不正ではないとは言われなかった。不正な管理人もその報いを受けたでしょう。法で裁かれたかもしれない。

 しかし当時のファリサイ派に代表される人々がしたように、彼らは神から見捨てられている、救いの外にいる、とはおっしゃらなかった。主イエスはこのたとえの不正な管理人のような者も、悔い改めて救いを受けるように招かれました。その賢さ、忠実さを、ふさわしく用いるように願われた。そのような主イエスの招きが、たとえを通して示されています。理解しがたいほどの、神のふところの深さ、神の愛が語りかけられているのです。

 

 やがてこのルカによる福音書を読み進むと、19章にはザアカイという徴税人が登場します。彼は悔い改めて、主イエスの救いを受け取っていくのです。ザアカイは「だまし取っていたら、それを4倍にして返します。」と、不正を認め悔い改めていく道に、生かされていったのです。ある意味で、この不正な管理人のたとえの続きとしても読むことができます。

 

 「神と富とに仕えることはできない」と言われる主イエスは、富が救いをもたらすのではない、主なる神が、主イエスご自身が救いをもたらすと語りかけておられるのです。

 主イエス・キリストの招きは、すべての者に及んでいます。私どもも、主の招きを信じて、宣べ伝えていきましょう。私のような者も主イエスは受け入れて愛してくださり、罪を赦してお救いくださった。ですからあなたも招かれている、と主の救いの招きを伝えていきましょう。



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